水は数十億年の地球の恵み
次長兼主任研究員
2024年1月4日
地球は水が存在する太陽系唯一の惑星である。地球は約46億年前、微惑星の衝突によって誕生した。この微惑星の中には、下水処理にも利用される水酸化物が含まれており、これが微惑星の衝突エネルギーによって分解されることによって、水蒸気を主成分とする原始大気が生じた。これが地球の水の源とされている。それにしても、なぜ地球だけに水が存在し、お隣の火星や金星には存在しないのだろうか。
火星は形成当初は地球と同様の原始大気を有していたが、地球より小さいために引力が小さく、大気を引き留めておくことができなかった。太陽から遠いことに加え、希薄な大気では強い温室効果が起こらないため、火星表面の気温は平均で-47℃という極寒状態になっている。
また、地球とほぼ同じ大きさの金星も、形成当初は地球と同様の原始大気を有していたが、太陽に近いため、強い紫外線が原始大気中の水分子を水素と酸素に分解してしまった。軽い水素は宇宙空間に逃げ、酸素は地上の物質と結びついたために、金星の大気の約97%が二酸化炭素となった。その結果、金星では強い温室効果によって、その表面の気温は平均で400℃以上に達する。よって、火星や金星は水が存在可能な環境ではない。
これに対し、地球は微惑星の衝突によって〝火の玉〟になった原始地球が冷えた後の地表面の気温が、水が存在可能な範囲にあった。原始大気中の二酸化炭素が水の中に溶け込み、その濃度が減少したために、地球では強い温室効果が生じず、金星のような灼熱の惑星にはならなかったのである。太陽からの位置と、その大きさの絶妙なバランスがもたらした奇跡である。
地球に約13.7億k㎥存在するとされる水のうち、淡水が占める割合はわずか2.8%で、しかも、私たちがすぐ利用できる湖沼水や河川水の割合は、それぞれ0.009%、0.0001%しかない。宇宙と地球が数十億年かけてつくり上げてきた貴重な恵みを、私たちはずっと守り続けていかなければならない。
一般社団法人鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局次長兼主任研究員。埼玉県出身。これまで雲仙岳1991~1992年噴火、ピナツボ火山1991年噴火、有珠山2000年噴火、三宅島2000年噴火、浅間山2004年噴火などの火山噴火とその噴出物の調査研究に携わる。大学教員および民間会社を経て、ジオパークを専門に担当する国内初の行政職員として、2021年9月まで長崎県島原市に勤務し、ユネスコ世界ジオパークの事業推進に従事。2021年10月から鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会の主任研究員に着任し、現在に至る。日本ジオパーク委員会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、ユネスコ世界ジオパーク現地調査員、日本火山学会理事。
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