第13回

カンボジアが水の危機に直面していると考えたことはありますか?

CHAO Sopheak Phibal
カンボジア王国公共事業運輸省下水・廃水管理総局副総局長

2022年10月24日

カンボジアは東南アジアに位置し、地表水と帯水層が豊富で季節的な雨量も多い、水資源に恵まれた国です。しかし、中央平原や高原地帯では、乾季に水不足となる地域が多く、降水量に左右されやすいという特徴があります。多くの河川や小川、湖とその支流は、開発に必要な莫大な水資源を提供してくれます。これらの水資源は、メコン川水系、トンレサップ川水系、タイ湾に流れ込む河川水系の三つに分けられます。
カンボジアは、「水資源が豊富な国」というイメージがあると思います。実際、それは事実です。皆さんはこの国が水の問題を抱えているとは思わないかもしれませんが、これからある外国人の友人の話を紹介します。2009年、彼はカンボジアの首都プノンペンから西に15kmのところにある孤児院系のNGOで数カ月間、生活をしていました。彼が直面したのは次のような問題でした。

■飲料水
日本やアメリカ、ヨーロッパでは、蛇口をひねれば水が飲めますが、それは先進国だけの特権です。カンボジアの多くの村では、雨水を飲料水にしています。雨水はセメントで作られた巨大な貯水池に長期間貯められますが、寄生虫や蚊が繁殖してしまうため、安全とは言いがたい状況です。こうした水によって、多くの人、特に子どもたちが簡単に治せるような病気にかかってしまうのです。しかし、水を浄化する薬品を入手するには多くの費用がかかります。
スタッフの話によると、このNGOの開設当初は、汚れた飲料水が原因で多くの子どもたちが病気になったそうです。その後、カナダの団体から寄付を受け、浄水器を購入することができ、病気の子どもたちの数は劇的に減少したそうです。

■汚染水
汚染された水は、不適切なゴミの処理にも起因します。カンボジアでは、料理や掃除などで出る生活ゴミを家の裏にある畑や農業用水の中に捨てています。こうしたゴミはカンボジアの至るところにあり、特にビニール袋が多く見られます。このようなプラスチックゴミから有害物質が漏れ出し、それが地表水や地下水を通じて水中に入り込んでしまうのです。

■インフラの欠如
雨季に降る大量の雨を処理するインフラが欠如していることも問題の一つです。カンボジアでは、雨が降るたびに水が地面に滞留し、飽和状態となった土壌がヘビや蚊といった有害な生物を引き寄せてしまうのです。
また、都市部の市場では人口密集エリアへ流出する有害物質も問題となっています。こうした汚染水は、未舗装の道路の地盤を不安定にし、カンボジアの主要な交通手段であるオートバイの運転にも支障を来しています。

最後になりますが、このエピソードを読んで、汚染水を浄化し、キレイな水を守るための解決策を見出すヒントを得ることができたでしょうか?水は私たちが生きていくためだけでなく、飲み水、入浴、料理、洗濯、家の掃除など、健康で幸せな生活を送るためにも必要なものです。

カンボジアは乾季に水が不足するものの、雨季に豊富な水資源がある点で、「ブルー・ゴールド」と呼ばれる特殊な水資源価値と結びつきがあります。SDGs策定以降、水の課題はカンボジア政府にとって最優先課題の一つなのです。

CHAO Sopheak Phibal

CHAO Sopheak Phibal

カンボジア王国公共事業運輸省下水・廃水管理総局副総局長
Deputy Director General of General Directorate of Sewerage and Wastewster Management, GDSWM/MPWT

Ministry of Public Works and Transport(MPWT、カンボジア王国公共事業運輸省)

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