第26回

予言された水母水族館

奥泉 和也
鶴岡市立加茂水族館館長
サカサクラゲ(当時)
サカサクラゲ(当時)
サカサクラゲ(最近)
サカサクラゲ(最近)
創業当時のパンフレット
創業当時のパンフレット
100種類のクラゲの展示を目指す
100種類のクラゲの展示を目指す

2025年4月1日

加茂水族館は80種類以上のクラゲを展示している「クラゲ展示種類数世界一」の水族館です。しかし、最初から計画的にクラゲの展示を始めたわけではありませんでした。
加茂水族館の歴史は古く、創業は1930年に遡ります。当時のパンフレットを見ると、水族館のマークがなんとクラゲでした。当時の飼育技術ではクラゲ展示は不可能です。理由を調べてみると、初代館長が温泉旅館の経営者でもあり、温泉マークを逆さにしたらクラゲになるとのことです。
この水族館は戦時中に閉館し新兵の訓練所として、戦後は水産高校の校舎として使用され、後に鶴岡市立加茂水族館として再開されました。2代目の水族館は、第1回東京オリンピックが開催された1964年に新築オープンし、後に鶴岡市から民間に譲渡され、倒産も経験しました。
私は、1983年にアシカのお兄さんとして採用していただきました。就職のモチベーションは、もしかしたら「仕事でも釣りができるんじゃないか?」。そんなことは無かったのですが…。
1997年、特別展示のサンゴ水槽に見たこともない生物を発見しました。当時の館長や先輩も誰も知らない生物です。知り合いの飼育係に電話すると、「サカサクラゲだ」と即答でした。「サンゴの骨格にポリプが付いていて無性的に増えたんだよ」と。
飼育法を伝授してもらい、成長したクラゲを展示したところ、お客さまは大喜び。もっと喜ばせようとクラゲを採ってきて、展示したところさらに大喜び。しかし、採ってきたクラゲは1週間も生存することはありませんでした。それもそのはず。サカサクラゲは泳がないので簡単に飼育できるけど、他のクラゲは泳ぐのでとっても飼育が困難なのです。
そこから苦難の連続でしたが、2014年に3代目の水族館を新築、2026年にはクラゲ研究所を増築し、100種類のクラゲ展示を目指すまでになりました。
1930年のパンフレットに載っていたクラゲマークは予言だったのかもしれませんね。ノストラダムス級の。

奥泉 和也 おくいずみ・かずや

奥泉 和也

おくいずみ・かずや

鶴岡市立加茂水族館館長。1964年生まれ。山形県出身。1983年、アシカの飼育員として加茂水族館に入社。水族館としての経営が危ぶまれるほどになった1997年、クラゲの展示を始める。1999年よりクラゲの展示に本格的に取り組み、経営状態を上向かせる。2003年には展示種類数世界一となる。2014年には水族館を新築リニューアル、2015年、館長に就任。現在、クラゲ飼育展示エリアの拡張工事中で、100種類のクラゲ展示を目指している。
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