第18回

コーヒーと水の関係

土井 克朗
UCCコーヒーアカデミー専任講師(東京校)

2023年8月1日

■コーヒーにおける重要な要素
コーヒーをおいしく飲むためには、コーヒー豆の品質や焙煎、抽出方法などが重要ですが、このほか、抽出に使用する『水質』にも注意することが必要です。
なぜなら、コーヒー液中にはコーヒー豆に起因する成分(可溶性固形分)が約1~2%程度であることに対し、『約98~99%は〝水〟』であることからも理解できるでしょう。

■水における風味への影響 
水は、その中に溶け込んでいるミネラル分の量を目安として、硬水、軟水に分けられます。
このミネラル分のうち、カルシウム、マグネシウムイオンを全て炭酸カルシウムに置き換えたものを「硬度」と言い、mg/Lまたはppmで表します。
日本の水は軟水が多いですが、海外(特にヨーロッパ)のものは硬水が多く、これにより同じコーヒーの原料を使用しても、飲んだ時の風味の印象が変わってきます。
カルシウムやマグネシウムの多い水をコーヒーの抽出に用いると、カフェインやクロロゲン酸類の抽出が阻害されます。軟水では酸味を感じやすく、硬水ではロースト香が強く、苦味が引き立ちやすいと言われます。
また、沸騰させることである程度軽減されますが、水に含まれる塩素は、コーヒーの香りを悪くしてしまいます。
このほか、水道管が古くなっている場合、赤みを帯びた鉄分が水に含まれやすく、コーヒーを抽出した時に、クロロゲン酸類がついてコーヒーの風味に影響を及ぼすこともあります。

■水の可能性
水には、コーヒーの楽しみ方を広げる可能性があると考えます。
現在、コーヒーの競技会では、『カスタムウォーター』と言いますが、コーヒーの風味を最大限引き出すため、バリスタ(抽出者)自身が水を作成し、研究者と分析・検証することが進んでいます。
地域に育む水質も同様に、コーヒーの風味のいろいろな表情を楽しめるきっかけにつながるものであると考えています。『水』によって、『コーヒーの楽しみ方』も新たなステージへ進んでいるのではないでしょうか。

土井 克朗 どい・かつろう

土井 克朗

どい・かつろう

UCCコーヒーアカデミー専任講師。2005年入社、2016年より現職。UCCコーヒーアカデミーでセミナーを受け持つほか、全国で講習会の実施などを担う。上島珈琲店の店長やエリアマネージャーを経験しながら、2014年にハンドドリップの技術を競う「ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ」で優勝。その後、商品開発に携わりながら、UCC社内の認定資格である「UCCコーヒーアドバイザー」のほか、「UCCコーヒー鑑定士」「(ブラジル)コーヒー鑑定士」「(アメリカ)CQI認定Qアラビカグレーダー」「(コロンビア)マイルドコーヒークオリティコントロールスペシャリスト」「SCA認定トレーナー」など多数の資格を保有する。

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