水道業界EXPO ’24

株式会社 多久製作所

キーワード
  • 耐震継手・耐震性鋼管継手
  • 耐震化
  • 老朽管更新
  • 溶接レス継手
  • 水管橋・添架管

水道配管におけるDX・脱炭素
橋梁添架管向け溶接レス耐震性鋼管継手「TASCAL JOINT-ER型」

代表取締役社長
山本 泰三氏

■採用広がるタスカルジョイント

 和歌山市の水管橋崩落事故、そして元日に発生した能登半島地震等の相次ぐ地震災害などを教訓に、導・送・配水の要を担う水管橋および橋梁添架管の更新のニーズが高まっています。こうした中、難施工現場が多い水管橋・橋梁添架管において短期かつ社会的影響の最小化を図る施工が可能で、将来的なメンテナンスLCCに配慮した技術として、当社の橋梁添架管向け溶接レス耐震性鋼管継手「TASCAL JOINT(タスカルジョイント)−ER型」の採用実績が着実に伸びています。
 タスカルジョイントは元々、建築設備での給水配管、連結送水管で多数採用されてきた継手技術です。これをベースに主に橋梁添架管向けに耐震性能を強化し、開発したのが「ER型」となります。
 ER型の最大の特長は、管接合にメカニカル形式を採用し、熟練技能を必要とせず迅速に施工できることです。工期を縮減し、道路管理者との調整や交通整理員の確保などの手間を大きく削減することができます。
 耐震性や強度については、溶接継手と同等以上の継手強度を有していることを神戸大学との3年間にわたる共同研究により確認しています。コンセプトとして、施工後に管路を一体構造体とすることを目指しています。橋梁添架管では、振動への耐性や応力が両端に集中することへの対応が求められますが、これらについても試験を通じて強度を確認しています。
 米子市水道局の三柳堀川橋の添架管更新工事において全国で初めてモデル採用いただいて以降、多くの水道事業体で採用いただいています。
 令和4年度に三原市から受注した本市橋(橋長=114m)の橋梁添架管(150A)配水管布設替工事は、タスカルジョイントの施工性、特長が生かされた現場となっており、施工状況については映像でも記録し、YouTubeで配信していますので、ぜひご覧いただければと思います(QRコード参照)。
 当初は50〜150Aとしていましたが、200Aをラインナップに加えました。当初はシングル管の多い西日本を中心とする展開を考えていましたが、寒冷地からの引き合いもいただき、主に東日本で採用の多い二重管構造の内管部の接続継手に現地溶接レス継手として福島県内の事業体で採用いただいています。

■維持管理性の高さ

 ウォーターPPP等の国の政策の動きもあり、管路の維持管理に注目が高まっています。水管橋や橋梁添架管の一番の悩みは施工後の将来にわたる長期的な維持管理です。
 タスカルジョイントは、維持管理性能の高さが大きな特長となります。ER型は、メンテナンスフリーを志向した製品です。管体はステンレス製(SUS304/SUS316)でメンテナンスの軽減・長寿命化が図れ、継手のパッキンにも耐塩素エチレンプロピレンゴム(EPDM)を採用し、耐久性にも優れています。挿し受口およびロックバンドはすべてステンレス鋼製、パッキンはセルフシール機構を採用しており、高圧(2.0MPa)にも対応しています。
 確かな耐久性を有し、塗り替えの必要もなく、メンテナンスの負担を大きく低減できます。

■性能は各種技術登録で証明

 溶接レス耐震性鋼管継手は、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」登録番号KK-230023-Aで登録、水道技術研究センター(JWRC)の「水道における新技術事例集(Aqua-LIST)」に登録済みです。JWRCの取組みでは、主に水管橋を対象とした施設点検等に関する新技術等の情報収集・整理・実証実験などを行う「水道施設の新たな点検手法等に関する研究(Aqua-Bridge プロジェクト)にも参加しています。施工実績を重ねていく中で、供用後のフォローアップを通じた技術の検証、向上に努めながら、客観的な技術評価、情報発信に努めていきたいと考えています。

■BIMに積極対応

 当社は建築配管分野で多くの実績を有しており、急速なBIMの普及、3D図面の現場での広がりを実感しています。一方、公共の水道分野は現場環境も異なることから採用に消極的な面がありますが、少しずつ変化も感じます。
 国土交通省が水道行政を所掌するようになった中で、配管におけるBIMの導入が加速していくと考えていますし、こうした動きは当社の強みになっていくと考えています。
 プラント施設およびその付随施設では導入が確実に進んでいます。施工管理をはじめとするアプリケーションの充実など、BIMは進化を遂げ、利便性は確実に向上しています。
 水道配管の従事者は確実に減り、情報を用いた効率化、高度化が必須になってきます。こうした課題へのアプローチはデータエビデンスが重要です。
 当社ではこれまでも積極的にDX技術の活用を進めてきましたが、製造から、設計、施工、維持管理についても、配管のあらゆる現場を変えていける手応えを持っています。
 タスカルジョイントについても、「モノ、情報、サービス」が融合することで、ステンレスの特性を生かしたさらなるサービスの高度化、配管分野における新たな価値の創出が図れると考えています。

■価値をつなげ、複合ニーズに対応

 当社が注力してきた一つが環境対策です。製造、運搬、施工等あらゆる工程での脱炭素化を図ってきました。当社最大規模の製造拠点となる関西工場に太陽光発電システムの設置を進めており、九州工場では、使用電力の全量を再生可能エネルギーとすることで、全社の消費電力の84%を再生エネルギーで賄うなどの脱炭素化へのアプローチを絶えず進めています。
 今年5月にインドネシア・バリでの世界水フォーラムに参加し、日本パビリオンへの出展、プレゼンテーションなどを通じて、環境性能をはじめとする複合的なニーズの重要性を実感しました。
 日本国内の水道事業環境も多様な課題を抱え、市場環境が大きく変化していますが、視野、発想を広げ、多様なプレイヤーと連携しながら、事業を展開していくことが今後ますます重要になってきます。
 タスカルジョイントは、多様な社会ニーズに適応していく可能性を持った製品だと思っています。市場に付いていくのではなく、先んじた対応が必須です。「もっとこういう使い方があるのでは」という可能性を広げ、ターゲット、コンセプトを大切にしながら「価値をつなげる」展開を図っていきたいと思います。

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