災害時に確実に活躍できる給水車を
長年のノウハウでラインナップとメンテを進化
大野 保氏
■給水車のトップメーカーとして
このところ毎年のように大きな災害が発生しています。1月1日に発生した能登半島地震でも、全国各地の水道事業体の方が給水車で被災地に駆けつけられ、大規模な支援活動が行われました。
当社は、1962年に創業して以来、60年以上にわたって押輪・継手の製造販売を中心として、水道事業に携わってきました。従来、給水車の市場は、あらかじめ決まった仕様のものしか出回っていない「売り手市場」でした。
そのような中、当社が長年培ってきた水道事業体のお客さまとのネットワークにより、水道事業体の側が本当に欲している給水車のニーズを把握し、10年ほど前から給水車の市場に本格参入しました。水道事業の現場のお客さまのご要望に対応して給水車の改良と進化に努めてきた結果、現在は給水車のシェアナンバーワンのトップメーカーになることができました。現場のお客さまの視点に沿った給水車づくりに努めた結果、市場を「買い手市場」の方向に導くことができたのではないかと自負しているところです。
■水道事業体が本当に欲する機能を提供
当社の給水車は、事業体のご要望に沿った設計による完全オーダーメイド製であるところが大きな特長です。ご用命をいただいた際は、ベテラン営業が迅速にお伺いし、ご納得をいただける給水車の製作に向けて、綿密な打ち合わせをして、給水車にどのような機能をお求めなのかを徹底的にお話しさせていただいています。
昨今、大型免許や中型免許をお持ちの方が減ってきていることがよく話題になりますが、当社では、準中型限定免許や普通免許に対応する仕様の給水車について、満水状態でも被災地での安定した走行が可能な4WD車も含め、多彩なラインナップを用意しています。
長年の実績を通じて、お客さまへのメンテナンスサポートも充実させています。充水状態の給水車の運転感覚は独特のものがあります。当社では、納車時等の運転講習も行わせていただいています。また、タンクの水抜き忘れやバルブの締め忘れといったことがあると、いざ被災地に向かおうとした時に給水車が使用できないということもあります。当社では、こうした事例も多く把握しており、定期的な点検講習のメニューも充実させています。
また、バッテリートラブルに対応するため充電器を搭載する等、起こりやすいトラブルの予防を基本仕様に反映させています。
■さまざまな利点がある新しい「バンタイプ給水車」
当社ではこのほど、新たに「バンタイプ給水車(箱型給水車)」を発売しました。バンタイプの利点はいろいろとありますが、まずは給水タンクが露出していないため、寒波に強いことが挙げられます。寒冷地仕様の給水車は、最近では北日本だけでなく西日本からも多くのお問い合わせを受けるようになりました。バンタイプは、そのような寒波対策のご要望に対して最適な給水車と言えます。
また、車内には機材や支援物資等を積めるスペースがあります。ヒッチメンバーの使用も可能ですので、予備のタンクや簡易トイレ、支援物資等をけん引することができます。4WDが標準仕様ですので、悪路でも走行性がよいとの評判もいただいています。
最近では、人手不足を受けて、給水車の操作経験がほとんどない方が被災地での支援に携わるケースも出てきています。当社は、バルブやポンプの稼働、給水などの操作を全てタッチパネルでできる「フルオートマチック」給水車を開発しました。タッチパネルの画面を見て押すだけで給水車の運用が誰でも可能になるものです。すでに、お引き合いもいただいています。
■残留塩素を保持するUVカット型給水袋
当社は、給水車を「水道施設の一部」と捉え、応急給水でも安全な水道水を確実にお届けすることを第一の目標に掲げ、開発に取り組んできました。
そのような中、給水車だけでなく、給水袋も水道水の安全・安心に対応したものでなくてはならないとの考えに至り、UVカット型の「KEB形非常用飲料水袋」を開発しました。
水道法では、給水栓から出る水の残留塩素濃度を0.1mg/L以上確保することが義務付けられています。一方で、給水袋に入れた水は、炎天下で紫外線を受けると残留塩素が急速に分解し、速ければものの1時間で残留塩素濃度が0.1mg/L未満になってしまいます。
UVカット型の給水袋は、残留塩素濃度を1日以上、0.1mg/L以上に保つことが可能です。水口は、どなたでも位置が分かりやすく、かつ開け閉めが確実なスクリューキャップを使用しています。底部にはマチがあり、充水した給水袋の自立が可能です。また、水口は、水を注ぎやすいように袋の横側に設けています。
従来の給水袋よりも厚みがあって丈夫であり、使用後に内部を洗浄して乾燥させて再利用することも可能です。
■災害時にも安全な水道水を
能登半島地震では、先ほどお話ししたように多くの給水車が被災地に集まりました。そこで、他の事業体の給水車をご覧になられて、「この給水車と同じ仕様を持つものを製作してほしい」といったようなご要望もいろいろといただいています。
長年、水道事業に携わってきた企業だからこそ持っている視点を今後も大切にして、災害時にも安全な水道水を被災地の方にご提供できるように、今後も研鑽してまいります。
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