安定した取水を効率的に
背面取水装置 WSSウォータースクリーン
渡瀬 幸司 氏
■独自構造のメリット
ここ数年、想定外の大雨による取水施設の被害が頻発しています。古くからの施設は、水を堰堤でせき止め、河岸のバースクリーンから取水する仕組みになっています。水中にグレーチングが縦置きされているようなもので、災害級の雨となると、押し寄せた石や流木が閉塞や破損を引き起こします。
これに対して当社のWSSウォータースクリーンは、堰堤と一体化した独特な構造をとっています。取水は堰の下流側に斜めに配置した網から、越流した水の下側(河床側)を取り入れる「背面取水」方式で行います。網目を通った水は堰堤内の配管から河岸の集水桝、導水管へと流れます。
網目幅はわずか1mmなのですが、特殊な網の形状や水の重さによって安定的な取水が可能です。大半の異物は堰が受け止め、そこを越えたものも水の勢いで流れていくので、目詰まりが非常に起きにくいのも特徴です。
この「必要なだけ水を取り、余った水で洗い流す」という構造がメンテナンスフリーを実現します。従来の設備は張り付いた落ち葉やゴミなどの清掃が必要ですが、往々にして取水施設へのアクセスはよくありません。そこに貴重な時間を割いている場合ではないというところで、WSSが業務負担の軽減に貢献できると考えています。
■改良とアフターケア
発売は20年以上前になるのですが、形状が落ち着くまでには相当な試行錯誤がありました。社内の実験棟で理論を検証し、現場に設置して、稼働状況を踏まえて改良する。地道な積み重ねで得た膨大なバックデータが、一見なんの変哲もない装置に込められています。
今でも災害などで不具合が生じれば、現場で原因を特定し、再発防止のための改良を施します。網の外側のフレーム板を強度の高いものに替えたり、裏側の補強材の形状や寸法を変更したりと、軽微ながら多くの改良を繰り返してきました。なお、網の破損に備えて即日出荷できる代替品を用意してあり、交換はおよそ誰にでもできる簡単な作業となっています。
■水道向けに大型化
簡易水道や専用水道の施設を中心に、納入実績は1,300基を超えました。その過程で装置を小型化・大型化し、取水能力ごとに日量100m³から1,500m³までの7種類をラインアップしてきたところです。
ある自治体では、「別の谷、別の村にも」と増やしていただいた結果、全部で25基が設置されています。リピートと口コミのおかげで、局地的にものすごく普及している地域があるのが現状ですね。
さらに昨年、「上水道の施設でも使いたい」という要望に応えるべく、日量5,000m³の大型WSSをリリースしました。高さや強度の制約から設計を少し変更しましたが、コンセプトは全く変わっていません。名古屋水道展にも出展し、多くの問い合わせをいただいています。
■公務災害の防止にも
取水量に異常があれば、大雨の中でも職員の方は水源に向かいます。が、濁流に入っての取水口の確認はまず不可能ですし、そもそも中山間地などは立ち入ること自体が危険な状況になります。
その意味で、WSSは万が一の事故を防ぐ労働安全対策にもなります。既存設備に問題がなくても、業務効率化や人手不足への対応、また災害対策の一環として、更新時期に合わせた導入をご検討いただければと思います。
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