
水道事業ニーズを重視したインフラ管理
NJSリスクコントロールサービス/小規模水道におけるハイブリッド小型緩速ろ過システム
大嶽 公康氏
天野 幹大氏
■求められる変化への対応
気候変動や災害の激化、人口減少など、上下水道を巡る事業環境は厳しさを増しています。当社では健全な水と環境を次世代に引き継ぐために、水と環境のコンサルティング&ソフトウエアのビジネスを展開していますが、社会の変化に対応する重要性は一段と高まっており、デジタルテクノロジーの活用が必須になってきていると感じています。
埼玉県八潮市内で発生した道路陥没事故を契機に、水インフラ(上下水道)の老朽化問題という大きな課題が社会に示されました。水道の漏水事故も多発していることから、適正管理によるリスク低減が求められています。官民連携の動きも進む中、最適なインフラ管理をカスタマーである市民に提供するには、民間企業の力が強く求められていると考えます。当社は、「リスクコントロールサービスによるインフラ管理の最適化」「地域と連携したカスタマーサービス0の創出」を重視した2サービスを提案します。
■平常時からリスクに備えを
災害や事故の対応には、発生時(非常時)の迅速な情報収集に加え、被害状況の把握、応援要請、対策方針検討など適切な指揮命令系統の確立が求められます。令和6年能登半島地震の対応では、復旧の遅れやリソース面・技術面の不足が目立ち、地域の人々が安心して暮らせる環境の確保に多大な時間を要しました。当社が提案する「NJSリスクコントロールサービス」は、非常時でも水インフラを可能な範囲で提供するという目的の下、これまでの「事前対応」「災害・事故発生後(応急復旧)」「災害・事故発生後(本復旧)」をより一歩踏み込んで対応するスキームです。コンサルタント業務は、支援要請等を受けて動き出すことが一般的ですが、災害が起こる前にリスク評価を行い、発災後に自主的に動いてお客さま対応ができれば、被害エリアの縮小や断水期間の短縮などに貢献できると考えています。
本サービスの展開方法は、①平常時・非常時の対応②水道管路のリスクコントロールサービス③下水道管路のリスクコントロールサービス―の三つです。
①平常時・非常時の対応では、それぞれ当社が業務の柱としている▽コンサルティング▽カスタマー▽ソフトウエア▽インスペクション―のサービスに対応する形で、これまでの業務と合わせて、水道施設情報管理システム「SkyScraper」(スカイスクレイパー)などの各技術を生かします。
平常時対応として、計画業務における「事業進捗管理支援」を提供します。計画業務と同時に発注するサブスクリプションのようなイメージで、調査結果に基づく事業実施のタイミングに合わせ、施設耐震化や更新完了の情報を計画策定・リスク予測に都度反映し、事業の進捗率やKPIの更新、リスク予測(マップ含む)の更新等の状況がすぐに分かる状態を目指します。これにより災害時でもデータベース上には最新の情報を反映したリスク予測結果があるため、スムーズな初動に貢献できると考えています。
非常時対応として、事業進捗管理支援業務のサービス(無償)として締結する「非常時支援協定」を提供します。顧客や水コン協からの支援要請に対応しながら、独自活動として、災害支援経験が豊富な人材や熟練社員、IT技術者で組織した「非常時支援チーム」による支援活動を実施します。非常時支援チームは、災害・事故発生時に情報収集と被災事業体の支援を目的に活動しますが、平常時の提案と合わせて活用すると最新データに基づいたリスク評価結果を活用できます。これにより、被災地点の推定や専門技術者による復旧方針等の技術支援、ドローン等による被害状況調査などを迅速に展開できると考えています。
②水道管路のリスクコントロールサービス③下水道管路のリスクコントロールサービスでは、管路の漏水事故や地震被害に対するリスクコントロールサービスを提供します。リスク予測、リスク判定、リスク低減に基づいた対策を実施することで、高リスク管の絞り込み、健全度判定、再構築と機能保全を図ります。当社では事故率が低く、通常手法によるリスク評価が困難なダクタイル鋳鉄管に着目しており、老朽度評価(AI診断)やリスク判定の改良が重要と考えています。さらに、既往管路の耐震補強技術については令和7年度AB-Cross実証事業(大成機工と穴水町との共同研究)にも採択されています。
■過疎地域へのサービス提案
年々増加している過疎地域では、人口減少や施設老朽化に加え、経営基盤の弱体化や技術継承の課題が顕著です。地域特性に応じた持続可能な水道システム導入が不可欠であり、故障しても地域で維持管理できるシンプルな浄水施設や分散型システムの採用が求められています。こうした中、水道事業者から中小規模浄水場に「緩速ろ過方式」の導入ニーズが高まっています。
近年の小規模浄水場や分散型システムでは、水処理の安定性や維持管理の容易さの観点から膜処理施設の採用が多いですが、初期費用の高さや高額な動力費・膜交換費、故障時のメーカー対応の遅さ等が課題です。当社の技術は、太陽光発電と蓄電池による無電源化に加え、従来の緩速ろ過方式で弱点だった濁度対応や維持管理性を改良した「ハイブリッド小型緩速ろ過システム(粗ろ過+緩速ろ過+UV-LED+次亜塩素注入)」となっています。過疎地で増加する休耕地を緩速ろ過池の建設用地にしながら、小規模水道施設への適用と分散型システムとしての確立を目指しています。
本システムは、樹脂製の市販品(バケツ、塩ビ管、バルブ等)による簡素な設備構成ですが、緩速ろ過の前処理に上向流粗ろ過の採用で、高濁度原水(100度程度)をほぼ動力を使わずに処理できます。災害で孤立した場合でも継続的な処理と耐災害性の強化に貢献できます。維持管理には、砂の表層攪拌等が必要ですが、逆張洗浄法の採用で作業軽減されるため誰でも操作ができ、農業従事者等の副業として農村部の地元雇用の創出も期待できます。なお、本システムは国土交通省 令和7年度AB-Crossプロジェクト(分散型システム)に、採択されました。
■地域の将来を見据えて
当社ではさまざまな水道サービスを展開していますが、リスクコントロールサービスやハイブリッド小型緩速ろ過システムは、今後の水道事業のニーズにあった技術だと考えます。なかなか実現に踏み出せていない事業体に対し、現在提案中のサービスと絡めた展開も視野に入れ、当社グループのさまざまな営業拠点や地域事務所から提案を行うことで、多くの事業体に輪を広げていきたいと思っています。
地域の環境と健全な水循環を守り続けていくことが、安全・健康・快適な暮らしを支える架け橋になります。企業理念「Purpose〈健全な⽔と環境を次世代に引き継ぐ〉」の実現に向け、当社が貢献できる方法で発展と水道サービスの向上に努めてまいります。
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