
「いざの時」応える製品ラインナップ
担い手や技術力不足を補う
大野 保氏
■押輪の出荷量は増加傾向
当社は1962年に創業して以来、60年以上にわたって押輪・継手の製造、販売を中心として水道事業に携わってまいりました。この間、管材や管種においては目覚ましい技術開発と発展があり、現在官民ともに「更新・耐震化」の推進が命題となっていることは間違いありません。ただし、現場が必ずしも、最先端の技術だけを欲しているのか、最新の知見を有しているのかは、まったく別の話だと認識しています。
全国のお客さまをお訪ねしていると、更新・耐震化の必要性は重々承知していても、例えば布設当時と異なり埋設物が輻輳し、更新ルートをとろうとすると長距離の迂回が必要で費用がかさ増ししてしまい、結果として年間の事業量が限られ、場合によっては漏水が起きてからの事後対応になりえる―などといった実情が見えてきます。能登半島地震、そして八潮市内での道路陥没事故を契機に、上下水道に関連する事故への目線が厳しくなっている中、リソース不足から手が回らない事業体の皆さまのご苦労がしのばれます。
またそうした事故現場での修繕に必要なのかどうか、まだまだA形、K形のゴム輪や同軸押輪をご所望するお客さまも多くおられ、近年出荷量は増加傾向にあります。問い合わせ内容を聞くに、必ずしも管路工事に熟達した方ばかりが現場を預かっているわけではない状況も窺われ、人手不足や技術力維持の課題は切迫していることを感じています。そうした全国の現場の最前線にとって、当社が製品ラインナップや、周辺技術の知識についてサポートする最後の砦として機能していると自負しています。
■水道屋ならではの給水車
近年、地震や風水害など自然災害が頻発化・激甚化するとともに、老朽化に起因する事故も発生し、給水車の出動機会が増加しています。中には地域で唯一給水車を保有している中核都市が被災してしまい、周辺自治体への応援に手が回らないケースが出ていることを踏まえ、小規模自治体でも危機管理意識を強め、首長や防災部局側の判断で給水車を新規導入する例もみられます。
当社は約10年前に給水車の分野に本格参入しました。それまで給水車は特殊車両を扱うメーカー等が決まった仕様で製造・販売する「売り手市場」にありましたが、水道メーカーの視点で、お客さまとともに使いやすさを追求する「買い手市場」へと変えることを目指しています。これまで「水」をよく知る企業として、またお客さまと徹底的に話し合い、ニーズを捉えながらオーダーメイドでの製作実績を重ねてきた結果、光栄なことに写真を持って「能登で見たこの給水車と同じ仕様のものがほしい」とお問い合わせいただくことも増えてまいりました。
実際、能登には地震や豪雨、そして寒波が襲いましたが、古い給水車が軒並み凍結で故障した一方、当社の給水車は一台も壊れずに帰還しました。当社の給水車はいわゆる“寒冷地仕様”ではなくとも、バルブの下にドレーンをデフォルトで設置してあり、水抜きができるようにしているためです。これは西日本でも寒波による凍結被害が生じていたり、災害の激甚化により全国から寒冷地へ応援に出向く事態が増加していたりという傾向を踏まえた対応です。また、北海道に納める給水車であれば、寒暖差で生じる結露による破裂対策のため、逃がし穴を空けてあるなど、さらなる手立てを施してあります。
■誰でも扱える給水車に
このように給水車の搭載機能や設備は高度化を進めつつも、扱いやすさの追究とアフターフォローの充実にも努めています。例えば設計段階や納品のカウンターパートは給水車をよく知るベテラン技術系職員であっても、異動によって担当者が代わり、管理がおろそかになってしまうケースもあります。また、実際に災害時に応急給水を担当するのは事務系職員であるとか、若手職員ほどオートマチックの普通免許しか所有しておらず、運転要員の確保に苦心しているといった課題もよく聞きます。
そこで当社ではその対応として、バルブ操作、ポンプ操作、給水など「給水車ならではの専門操作」を、タッチパネルによって誰でも簡単にできるフルオートマチックの給水車を開発しています。さらに車内に1トンのタンクや必要機材を積載した普通免許対応の「バンタイプ給水車(箱型給水車)」もラインナップしました。積載容量としてはコンパクトですが、4WDが標準仕様であるため、能登半島地震の支援でも課題となった悪路での走行性が良い点や、タンクが露出していないために寒冷地にも強いといったメリットがあります。
さらに、いざという時に必ず稼働できるよう、日々のメンテナンスサポートを充実させたり、運転講習なども実施しています。納品後の定期的なアフターフォローも徹底しており、その中で得られた知見を基本仕様に反映していくことで、年々アップデートが進んでおり、現場へよりよい製品をお届けすることができています。
■軽くて強い組み立て式タンク
東日本大震災以降、台数の限られた給水車の稼働性を高めるツールとして仮設給水槽の普及が進んでいます。基本的に屋外に終日設置されるものであるにも関わらず、一時はさまざまなメーカーが市場に参入し、段ボール製など、雨や雪が降ればひとたまりもないという製品もありました。
そうした中、当社の「設置型組立式給水タンク」は、組み立ての容易性と設置後の強靱性を兼ね備えた製品として能登でも貢献し、間近に御覧いただいた応援側の事業体はもちろん、被災事業体側でも引き合いをいただいています。
「設置型組立式給水タンク」は、基本的に樹脂製の架台と、アルミ材料によるフレーム、ハニカム構造体の高強度樹脂によるパネルで構成されています。内袋は二重にすることで180ミクロンの厚みを持ち、丈夫さとともに、食品衛生法に適合した衛生性も担保しています。
パーツごとを軽量にし、工具なしで組み立てられる構造とすることで、人手不足の中、女性職員を含めてどなたであっても設置しやすい製品となっているのが特長です。内袋は温度・湿度が管理された資材庫等であれば10年程度の保存が可能です。また、毎年の訓練等でご活用いただくことを踏まえ、1枚から販売しており、ご好評をいただいています。
■現場に根差して貢献
長年、水道事業に携わってきた企業だからこそ持っている視点、そして長年培ってきた全国のお客さまとのネットワークを大事にして、今後も課題を的確にとらえ、その改善や解決につながる解を提供できるよう、今後も研鑽してまいります。
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