水道業界EXPO ’23

株式会社 クボタ

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管路のライフサイクルでDX

KSIS PIPEFUL(パイプフル)

■業務を〝誰もが効率的に〟

 クボタは今、水道管路に関する各種アプリケーションやIoT関連製品を包含する「KSIS PIPEFUL」(ケーシス・パイプフル)というプラットフォームを作っています。難しく聞こえるかもしれませんが、目指すところは「クラウドでのデータの一元管理を基盤とした、管路のライフサイクルに沿った多様なサービスの提供」です。
 前提となる水道事業における課題として、事業体職員と工事事業者、つまり水道の担い手の減少があります。このままでは本来やるべき業務に手が回らず、国民の皆さまに水道を届けるという当たり前になっていることがかなわない状態になりかねません。そこで、幅広い業務を誰もが効率よく行えるように変えていく、補完のためにDXを推進するというのが基本的な考え方です。
 昨年の名古屋水道展では、管路に関するソリューションを「計画・監視・対策」の三つのフェーズに分けてご紹介しました。この構想をPIPEFULでも引き継ぎ、「調査→設計→施工計画→施工・検査→竣工→状態監視→点検→診断→更新計画→調査…」という一連の管路のライフサイクル全てでサービスを提供するとともに、そこで収集・入力したデータを他のサービスでも活用して業務の高度化や効率化、品質向上を図る考えです。

■施工情報システムのリニューアル

 PIPEFULのサービスのうち、調査から竣工まで、いわゆる管路の設計・施工に関するものについては「PIPROFESSOR」(パイプロフェッサー)と総称することにしました。具体的なサービスとしては「施工情報システムⅡ」を既にリリースしているほか、今年の夏ごろには他に三つのサービスも開始する予定です。そのほか、「地下埋設物3Dマップ自動作成」や「モニタリングシステム」の開発にも取り組んでいます。
 施工情報システムは、管工事の際に必要な施工管理をスマートフォンで行いながら、管理情報などをもとに、継手チェックシート、工事日報、管割図といった施工管理書類を自動生成するものです。今年4月にサービスを開始した施工情報システムⅡは、従来のシステムと比べ、操作性の大幅な向上と対応管種の拡大を実現しました。従来のシステムをご使用いただいたお客さまからさまざまなご意見を頂戴し、それらを可能な限り反映させたこともあり、今のところ「非常に使いやすくなった」と評価していただいています。管種についてはGX形、NS形E種、K形、フランジ形のダクタイル鉄管に加え、φ500~1000のNS形と配水用ポリエチレン管にも対応できるようになりました。
 関連する製品として、継手のゴム輪位置を測定し測定値を送信できる「サイトチェッカー」や、継手写真から画像解析し継手の屈曲角度を自動算出する「サイトアングル」も提供しています。

■設計・施工系サービスの拡充

 開発中の「自動配管設計支援システム(PIPE-Pro)」についてはおおよその形が見えてきました。その名の通り、布設計画線を入力するとダクタイル鉄管の管割図を自動で作成するシステムとなっており、6月30日に開催される第4回水道ICT情報連絡会で発表します。
 最大の特徴は、異形管まわりの一体化長さ、直管継手の曲げ角度や切管長さなど、ダクタイル鉄管固有の設計ルールを踏まえた計算を自動化し、AI技術を活用して適正な配管設計を選出できることです。これにより設計品質を向上・均一化させることができます。
 最近では設計を直営で行う事業体も少なくなってきました。業務委託を受けるコンサルタントも技術者は不足傾向にありますし、事業体としては成果品が正確かどうかをチェックするのも簡単ではないはずです。正しい使い方をしなければ製品の性能は十分に発揮されません。PIPE-Proはそこを担保できるのが大きいと考えています。
 自動化のメリットとしては当然ながら、設計にかかる時間の大幅な短縮も可能です。参考にはなりますが、比較検証においては、作業時間は熟練者による設計時間の10分の1程度でした。相当に便利なシステムになると思っています。
 「施工計画システム」は配管設計結果に基づき工程計画、材料・土工数量を自動算出し、施工情報システムにデータを引き継ぎます。「提出書類作成支援システム」は施工情報システムの自動書類作成機能の延長線上にあり、「自動配管設計支援システム(PIPE-Pro)」「施工計画システム」「施工情報システム」を組み合わせて使用することでもっと多くの書類を出力できる、というものです。一度入力、または取得したデータがさまざまなシーンで活用できるという意味で、非常にPIPEFULらしいシステムだと思います。

■維持管理・計画系サービスの展開

 ここまでお話ししてきた設計・施工系のPIPROFESSORに対し、状態監視から更新計画までのサイクルについては、「PIPISION」(パイピジョン)と総称することにしました。PIPISIONでもさまざまなサービスや製品を用意しています。一昨年には、「AIを活用した老朽度評価」の提案を開始しました。直近では鉄管以外の管種にも適用が可能になるとともに、更新効果を長期的に評価し、優先度を工事区間単位で設定する「自動グルーピング技術」も確立しました。
 現在は今年中のサービス開始に向けて、管路の水圧・流速などのデータを測定しデータ送信を行う「ウォーターパイプコム」の準備を進めています。この無線点検データを多くの地点で取得することにより、目下開発中の状態監視システム「KCoMS」(ケーコムス)との連携でリアルタイムの状況を把握できるのはもちろん、次のステップとなる診断や更新計画の精度を上げていくことにもつながると考えています。

■「クボタならでは」に取り組む

 われわれクボタパイプシステム事業部は、従来の製品製造・販売から維持管理分野へと事業領域を拡大し、かつこれまでより広い範囲で水道事業に貢献していこうと考えています。この「管路ソリューション事業」の核は設計・施工・維持管理業務のDX化であり、これらの業務に関する技術の強化、技術者の育成は不可欠です。その表れが6月に新設された管路整備技術部ということで、これからも各関係部署と連携しつつ、管路を巡る課題に対するソリューションの提供に努めていく所存です。
 最初にご紹介した施工情報システムが顕著な例になりますが、「クボタはパイプの開発と製造を担ってきたメーカーであり、製品を熟知しているクボタでないとこうしたシステムは作れない」という自負はあります。クボタだからできる、やらなければならないことに、これからも取り組み続けてまいります。

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