既存施設能力や経営状況を総合的に勘案した原水水質対応
事業全体を俯瞰した支援の提案
■逐次見直し・追加される 基準値等への対応が課題に
わが国の水道水質基準等は、その時々の最新の科学的知見に従い、逐次改正方式により見直しが行われています。健康影響評価の結果に基づく基準値等の見直しや実際の検出状況などを踏まえた項目の追加・分類変更は、安全・安心な水道水の安定供給に大きく寄与する一方、水道事業体では新たな検査項目や強化された基準値等に既存の浄水処理工程では対応できないといった課題に直面することも少なくありません。例えば、平成27年4月から「トリクロロ酢酸」の基準値が強化(0.2mg/L以下→0.03mg/L以下)された際は、改正の幅が大きかったこともあり、当社にも活性炭処理の導入など浄水施設・設備の設計に関する多くのご相談をいただきました。
最近では、令和2年4月から有機フッ素化合物(PFAS)のうちペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)が水質管理目標設定項目に、ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)が要検討項目に位置付けられました。PFAS対策については水道利用者も高い関心を寄せていることもあって、水道事業体からご相談をいただく機会が増えてきています。
このほか、近年では原水水質の突発的な変化をもたらすような局地的豪雨なども頻発化しており、時々刻々と変化する水質課題への対応は決して容易なものではありません。
■最適な対応策はCase by case
かつてのような整備・拡張期であれば、原水水質に合わせて新たな設備を導入することが比較的容易だったかもしれませんが、維持管理の時代に突入した現在は、既存の施設・設備で新たな課題に対応することが求められていると言えます。水質改善の視点だけでなく、経営状況やアセットマネジメントなどを踏まえた施設の更新・耐震化などを含む事業全体を俯瞰し、対策を模索していくことが必要だと考えます。
そのため当社では、水質管理に関する物理的・化学的な技術提案に偏ることなく、水安全計画・水質事故対応マニュアル等の策定や運転管理上の工夫などのソフト対策から浄水施設・設備の整備といったハード対策までを一元的に支援するとともに、各事業体の経営状況や原水水質、浄水施設の現状や能力などによって異なる最適な対応策をご提案します。特定の物質が高い水準で検出された際、どうしても「高度浄水処理等を導入する」といった発想に至ってしまいがちです。しかし、予算には限りがありますし、一度整備してしまうと長期にわたりランニングコストを要することになりますから、やはり既存施設の能力をできるだけ生かし、運転方法や仕組みの変更などの新たな発想が重要となり、ろ過速度の変更、薬品の種類や注入量・注入点の変更など運転管理の調整で当面は対応できる可能性があります。施設・設備を導入整備する場合も、複数想定される処理方式や処理フローの中から最適なものを選択することが肝要ですし、既存施設との相性も判断して運転管理上の工夫と組み合わせた対策を打つことが効果的と考えられます。また、広域化や統廃合を含む施設整備計画と合わせて検討することで、より効率的な事業運営につなげることができるかもしれません。施設数の減少による中長期的な費用削減効果はもちろんですが、厚生労働省の生活基盤施設耐震化等交付金においても、広域化関連のメニューが以前と比べて充実してきています。
■水道行政移管を契機に
浄水場の建設や設備の導入等に当たっては、膨大な事業費が短期に集中し、一気に経営を圧迫することにもつながります。厚生労働省の水道施設整備費補助金や生活基盤施設耐震化等交付金による財政支援の活用は効果的ですが、申請するだけでも小規模な水道事業体にとっては大きな負担となります。当社では、財政支援の適用可能性に関する検討から交付申請にかかる事務手続き、事業評価までを包含した支援が可能であり、水道料金の値上げ抑制に少しでもつながるよう、資金調達をバックアップします。また、PPP/PFI手法の発注者支援については、導入可能性調査・検討の実績を積んできていますし、コンソーシアムとしての取組み実績もありますので、受発注双方の視点を踏まえ、さらなるスパイラルアップを図っていきます。
水道行政移管の関係法が成立し、令和6年度からは国土交通省が水道整備・管理行政を担うことになりました。補助制度がどのような形になるのかについては、今後検討されていくものと認識していますが、わが社が長年にわたって上下水道事業へのコンサルティングを通じて蓄積した国交省の補助制度に関するノウハウも活用しながら、引き続き水道事業体の申請事務を含めた事業推進を支援していきたいと思っています。
■PFASの動向に注視
今、水質関連で注視している事項としては、やはりPFOS・PFOA・PFHxSを中心とするPFASへの対策が挙げられます。規制に関する国際的な動きが活発化しており、国内の暫定目標値や項目の位置付けのあり方が今後どのように検討されていくか、気にかけているところです。今年度から厚生労働省の補助金・交付金における高度浄水施設整備事業費にPFOS・PFOA対策のメニューが追加されていることもあり、今後は調査・検討や代替水源の新設、除去等対策施設の導入整備に係る事業機会の増加も想定されます。先ほどからの繰り返しにはなりますが、水質面だけでなく事業全体を捉え、ソフト・ハード両面の支援を幅広く提案していきます。
私事ではありますが、当社に籍を置いてから今春で20年が経過しました。これまで水源対策や浄水処理だけでなく排水処理施設の基本設計・詳細設計などを含めて多くの水質管理・水質改善に関する業務の経験を積ませていただきました。今後も水質管理・水質改善を自分の主分野として、技術的知見やノウハウの蓄積を続け、水道事業に貢献していきたいと考えています。
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