更新までの期間を支える継手補強技術
耐震型補強金具
浅井 久和氏
■更新だけでは追いつかない 管路の耐震化
近年、水道事業を取り巻く環境は大きく変化しています。高度経済成長期に整備された管路の老朽化が進む一方、人口減少による料金収入の減少、資材価格の高騰、人手不足などにより、更新事業を計画どおり進めることが難しくなっています。基幹管路の耐震化率はわずかづつ向上しているが、依然として多くの非耐震ダクタイル鋳鉄管が残されているのが現状です。
特に、K形ダクタイル鋳鉄管は全国の基幹管路や重要施設に接続する管路にも数多く使用されています。これらの管路を耐震化するには布設替えによる更新が最も有効ですが、管体が健全で更新基準年数までの期間を十分残している場合には、限られた予算の中で更新優先順位が下がることも少なくありません。一方で、過去の大規模地震では非耐震ダクタイル鋳鉄管継手部の抜け出し被害が繰り返し報告されており、令和6年能登半島地震においても継手被害が確認されています。
こうした状況の中、既設管を活用しながら継手部を補強し、管路の安全性向上を図る技術として耐震型補強金具が効果的です。管路が健全であれば、現状の管路を更新基準年数の満期まで安心して使い続けることが可能になります。
■既設管を活用した継手補強工法
耐震型補強金具は、非耐震ダクタイル鋳鉄管の継手部に後付けで設置する補強工法です。離脱防止性能を付加する「耐震補強金具(Ⅰ型)」と、離脱防止性能に加えて伸縮性能および水密性能を付加する「耐震継ぎ輪(Ⅱ型)」の2種類を組み合わせることで、管路の耐震性向上を図ります。本工法は断水を伴わず施工できることから、代替管路の確保が困難な基幹管路や、浄水場・配水場など施設内の場内配管にも適用できます。また、既設管を撤去することなく継手部のみを補強するため、掘削範囲を抑えながら効率的な対策が可能です。
さらに、将来的な施設統廃合やダウンサイジングを予定している管路の暫定対策などにも活用できます。
■大型震動台実験にて検証した新技術
耐震型補強金具は、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター・実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)にて実施した埋設管路を対象とした地盤崩壊実験により、継手部が地盤変位に追従しながら伸縮を繰り返し、抜け出しを防止する様子が確認されました。
また、現在、国土交通省の「上下水道一体革新的技術実証事業(AB-Crossプロジェクト)」において、組み合わせの耐震性能を確認するため、能登半島の被災地域での基幹管路等をフィールドとした「補強金具による非耐震ダクタイル鋳鉄管路の耐震補強に関する実証事業」が進められています。その場所にて、施工性や工程短縮効果などの検証が行われております。
耐震補強金具および耐震継ぎ輪は、水道技術研究センターの新技術事例集「Aqua-LIST」にも掲載されており、設計資料や紹介動画を通じて技術内容を確認することができます。耐震化の加速が求められる中、耐震型補強金具は既設資産を有効活用しながら管路の安全性向上を図る新たな選択肢として期待しております。
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