連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第9回 3次処理は環境基準対応 高度処理導入の狙い

昭和51年_09月27日 日本水道新聞_第0377号

2022年10月28日

今や、下水道の高度処理は常識ですが、当初は三次処理といわれていました。その導入はどのような形で行われたのか。日本下水道新聞では、当時の建設省下水道部の井前部長にインタビューをしています。

――下水の三次処理の問題については、建設省も実際的な研究に取組まれて、行政指導をやっているが、三次処理の必要性と行政指導する立場から、基本的な姿勢について。
井前 三次処理というのは処理水の水質を高度に処理することを意味します。三次というからには、その前に必ず一次、二次処理があって、三次処理ということになるわけです。しかし、本当の意味の高度処理というものは、必ずしも一次、二次処理を伴わないでストレートに高度処理する方法もあるわけです。例えば、物理化学処理なんていうのも一種の高度処理であり、かつ三次処理であるわけです。つまり、中味としては同じものであるわけです。
スタンダードのいままでの下水道のやり方だと、まず、活性汚泥法による二次処理までの施設の普及をやるわけです。それで十分でない場合には、水質をさらにきれいにしよう、高度処理をしようということで、結局、二次処理に続くということから、その施設は三次処理ということになるわけです。
一口に三次処理といっても、どういう地域あるいはどういう場合に高度処理をしなければいけないかということは、やはり処理水を受け入れる公共用水域ごとに違うのではないかと思う。
つまり、処理水を海に入れる場合、川に入れる場合、あるいは湖に入れる場合はどうか――など、それぞれ受け入れる公共用水域によって、おのずからそのやり方なり、目標が変わっていくのではないかと思う。

――受け入れ的なものとは、環境基準のことですか。
井前 はっきりしているのは環境基準に対応してやっていくということですが、湖のような場合には、いわゆる富栄養化現象を防ぐに必要な環境基準というものがまだ決まっていないわけです。つまり、窒素、リンの基準が決まっていない。
いまのところ、基準は決まっていないけど、閉鎖水域では、窒素、リンは富栄養化の引金になるといわれているので、やはり下水道サイドとしても、本当は下水処理水から窒素、リンといった富栄養塩類を取ることは、基本的には必要なんでしょうね。
どの程度まで取るかという目標がいわゆる環境基準であって、目標になるわけです。 窒素、リンを取るということは、もともと下水道としても必要ではないかと思うわけです。

――三次処理の必要性を下水道サイドからみた場合には、三つにわけて考えることができるわけですね。
井前 三つあります。前から三次処理に対する基本的な考え方は三つあるといっています。一つは、公共用水域の環境基準に対応するように、より高度な処理をするための三次処理。 そして、これも環境基準であるけれども、閉鎖性水域の富栄養化防止のための窒素、リンなど栄養塩類の除去のための三次処理それから、直接処理水を再利用するために、より高度な処理水を得るための三次処理――の三つである。
その目的によって、いろいろと三次処理のやり方が決まってくるわけで、前からいっているように、まずその基本は、環境基準対策としての三次処理である。やはり、下水道は公共用水域の水質汚濁を防ぐのが目的であるから・・・。

――それでは実際に三次処理施設の建設を決める場合の考え方、技術選択については。
井前 やはり維持管理面からでしょうね。 ムチャクチャにコストが高いとか、エネルギーを大量に消費するとか―では維持管理が大変ですから・・・。維持管理面からみて・・・ということになろうかと思います。

――画一的にはいえないでしょうが、一番のポイントはやはり維持管理に――。
井前 やはり維持管理経費からみて・・・ということです。(中略)しかし、大量の都市下水の処理に応用した場合、建設コストはもちろん維持管理の問題があると思う。そのへんのところがポイントで、チェックしなければなりません。
(原文ママ)

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