戦後の水道主要資材単価は、厚生省が年度当初に公表する「標準価格」をほぼ遵守する形で推移してきました。しかし、昭和47~48年に各分野で物価が高騰したことから、標準価格制度を廃止したものの、事業量の減少でその実勢価格なるものが「コスト割れ?」現象を起こし始めました。
厚生省水道環境部は昭和49年5月29日付で、「国庫補助事業に係る申請に使用する主要資材単価」の標準単価方式を廃止し、補助事業者が「適正な単価決定」する〝実勢単価方式〟とする旨の通達を行いましたが、この転換を巡っては、さまざまな反響を呼びました。
「物価が不安定な現状から、標準単価を止めて、〝実勢単価〟にすることは的を射ている」(鉄管業界)と好感する業界がある一方、設計・コンサルタント業界や工事業界では、「設計や工事請負の場合、拠りどころがなくなって、混乱を来す」と懸念の色を濃くしました。また、ユーザーである水道事業体側も、妥当説と懸念説に分かれ、需要と供給のバランスを底辺に、〝実勢価格方式〟がどう落ち着くか注目されました。
厚生省が毎年度通達してきた主要資材の標準単価は、国庫補助事業の補助申請にチェックするために設定されてきた〝物差し〟の役目を果たしてきました。ところが物価狂乱により、各資材メーカーは年度途中で価格改定という値上げを行ってきたため、標準単価は〝標準〟の機能を失いつつありました。そのため厚生省は、価格決定は補助事業者に委ねるという〝実勢価格〟の採用に踏み切りましたが、これを主要資材業界は、「昨年起こったような混乱を避けるためにとられた妥当な措置」との見方を示しました。