連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第40回 高普及時代の水道行政答申 水道環境部発足10年で

昭和57年_11月29日 日本水道新聞_第2353号
昭和59年_03月29日 日本水道新聞_第2473号
昭和59年_04月23日 日本水道新聞_第2479号

2024年2月2日

昭和57年11月27日、生活環境審議会水道部会の三つの専門委員会のトップを切って水質専門委員会(大沢利昭・東京大学薬学部教授)が開かれました。

近年における分析技術の進歩は水道原水中の多数の有機化学物質の存在を明らかにしているが、これら物質の中には発ガン性など人の健康への影響が懸念されるものもあり、水道サイドとしても水道水の一層の安全性を確保することが大きな課題となっている。また、異臭味水の供給による千七百万人もの人々が影響を受けていることも報告され、供給水質に対する国民の関心も高まっているところであり、(中略)
①水道水中の微量有機化学物質の規制②おいしい水の供給―に焦点をあてて審議を行ったが、このうち「微量有機化学物質」については基準の設定のほか、検査方法及び検査体制、また「おいしい水」については評価方法、ガイドラインの設定、塩素注入管理のあり方―について、今後六回程度の会合を開いてまとめていくことになった。(原文ママ)

厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会(会長=鈴木武夫・国立公衆衛生院長)は二十六日午後一時半から東京・霞が関の厚生省特別第二会議室で水道部会(部会長=小原隆吉・前日本水道協会専務理事)を開き、「高普及時代を迎えた水道行政の今後の方策」についての答申をまとめ、渡部厚相に提出した。答申は、高普及時代における水道の目標として①ライフラインの確保②安心して飲める水の供給③おいしい水の供給④料金格差の是正――の四本柱を打ち出し、量・質両面における向上を目指すべきだとしている。「ライフライン確保対策」では地震・渇水等に強い施設づくり、「安心して飲める水対策」では水質基準等の充実、微量汚染も含めた水質監視体制整備、簡易専用水道の管理徹底など、「おいしい水対策」では富栄養化防止、浄水操作の適正化、高度処理導入、「料金格差対策」では最高と平均とで二倍以内の格差を目途とした補助制度の運用配慮など――を目標達成のための具体的方策としている。答申を受けた厚生省では今後、答申項目に必要な肉付けを行い、施策へ結びつける考えだ。(原文ママ)

欧米諸国に比肩するほどの高普及をクリアしつつあるわが国の水道を、国民生活や経済社会を支え発展させる不可欠な公共財に位置づけ、現実の問題症候群を科学的に解析、あるべき水道像を明らかにし、そのために何をなすべきか。
厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会が三月二十六日に答申した「高普及時代を迎えた水道行政の今後の方策」は、こうした着想と論理に立脚し、経営・管理、施設、水質の三面から専門的な検討を加え、水道行政――事業の進路を明確にし、具体的な〝処方〟を示した〝総合答申〟としてエポックを画するであろう。(中略)
近代水道が導入されてから一世紀になんなんとする時、高普及時代を迎え、国際的な情報や知見に頼ることは重要だとしても、わが国の風土とニーズに応じた自主性の色濃い行政方策を総合的に盛った答申であると見ることができる。
それは、ライフラインとしての水道観に立ち、「水道サービスの充実・向上」を図る必要をアピールしたものと集約できることも可能であるが故に、国民的なコンセンサスを強め試行錯誤を伴いながらも着実な実現が望まれる。
それには、経営の合理化や効率的な事業執行が前提条件となることは勿論であり、また細部的には議論のあるところではあるが、水道に係わる広範な各階各層が現代水道の存在意義を深く認識し、相互に活性力を高めつつ実践に向けてスタートを切るべき「国民的な共通目標としての答申」と総括することができる。
なお、このエポックを画すであろう答申が、厚生省の水道環境部十周年の年に出たことは、一層、その歴史的な意義を感じさせる。(原文ママ)

なお、昭和59年4月23日号で水道環境部設置10周年特集を組み、その中で山村勝美部長は次のような談話を寄せています。

水道環境部は、水道と廃棄物関係行政の計画的かつ強力な展開ということを目的に、昭和四十九年四月にスタートを切った。(中略)
構想自体は、アプローチ方策答申の出された昭和四十八年にはすでにできあがっていたらしいが、その成立は、諸事情がからみ〝難産〟だったようである。(中略)
この間、当面の懸案であった水道法の改正が昭和五十二年五月に行われている。これは、広域水道関係を中心とした二十年ぶりの改正で、簡易専用水道を法的に位置づけたものとなっている。
それから、補助金に関する政令、法律に基づく補助については水道環境部としての力を発揮してきたと思う。何よりも国庫補助金を増やそうということで、部ができて早々の四十九年十二月には、まず生活環境議員連盟を再結成。(中略)
水道環境部が設立して十年でちょうど答申が出たわけだが、大きな反省と将来展望をくり返しながら行政を展開していくのがわれわれの責務であり、事業者、国民の要望をよく聞き入れ、それが実現できるような具体的な施策を出していくことに努めながら、二十年目にはまた、修正を行い、新しい方向づけを行っていくこととしたい。(原文ママ)

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