戦後の水道行政の展開に多大な影響を及ぼした一つとして、昭和48年生活環境審議会の「水道の未来像とそのアプローチ方策に関する答申」を挙げることができます。それは、この答申が行政主導型の新水道法を作り、広域水道圏の推進、水道料金の格差是正、需要の抑制のための逓増料金の導入などを盛った画期的なものだったからです。
厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会(進藤武左ェ門会長)は三十日、午後二時から東京・日比谷の松本楼で開かれた総会で水道部会がまとめた『水道の未来像とそのアプローチ方策に関する答申』案を了承、このため、同夕、進藤会長は斎藤厚生大臣に対し、『水道の未来像とそのアプローチ方策について』答申した。答申は、一昨年十一月の中間答申が示された基本的方向である①ナショナルミニマムとしての水道理念の確立②新しい理念に即応した広域水道圏の設立③施設整備の計画的推進④主要課題の解決の方向⑤行政機構等の整備に対し、現行諸制度の見直し、広域水道圏設定の具体的基準、水道料金のあり方を検討、肉付けして、❶水道の理念と未来像、❷新しい理念に即応した広域水道圏の設定、❸水道財政のあり方、❹水道制度の整備からなっている。これによれば、「すべての国民が均衡のとれた負担で同質のサービスを受けられることを目標とするナショナルミニマム理念を確立し、これを達成するためには今後、水道の広域化を計画的に実施し、水源の確保推進及び統合を推進するにあたって水道事業に対する財政援助を強化すべき」と提言するとともに、「そのためには、まず水道法を改正し、行政レベルでの全国的な水道整備計画の必要がある」と述べている。また、適正な水道料金のあり方についても考察し、需要抑制の料金体系について付言している。
生活環境審議会が厚生大臣から水道の未来像とそのアプローチ方策について諮問を受けたのは四十六年十月。これは同審議会の前身である公害審議会が四十一年に「水道広域化方策と水道経営、とくに経営方針に関する答申」を行い、水道の広域化の方向を示したが、その後の社会、経済の進展をふまえ、今後の水道整備のあり方を再検討する必要があるとして諮問されたもの。
同審議会水道部は諮問後、水道事業の進展ならびに水道事業をとりまく諸環境の変化の著しいことにかんがみ、可及的すみやかな時期に基本的な方向付けを打出す必要があると、四十六年十一月に中間答申を行って、今後の水道の進むべき基本的方向を示唆した。
中間答申で示された基本的方向は、①ナショナルミニマムとしての水道理念の確立、②新しい水道理念に即応した広域水道圏の設定、③施設整備の計画的推進、④主要課題(水源開発の促進、水道水の安全性確保、水道料金の均衡化)の解決の方向、⑤行政機構等の整備というものだった。(中略)
これらの問題は、学識経験者による水道広域化専門委員会と料金問題専門委員会を設置し、具体的検討を行った。
両専門委員会は昨年四月以降、延べ十九回にわたって開催、さる七月の第七回水道部会に審議結果を報告。水道部会では、両専門委の報告をもとに、中間答申で示された基本的方向の具体的な肉付けを行い、八月の第八回部会で答申案をとりまとめ、答申にこぎつけたわけである。(原文ママ)
これを受けた形で、翌昭和49年に水道環境部が新設され、昭和52年の水道法改正につながりました。
その後、平成13年の中央省庁の再編成で厚生労働省健康局の1課に縮小されましたが、近代水道2世紀に向けて新たな歩みを続け、その意味では当時、平成16年度8月までに立ち上げようとしている「新ビジョン」がどのような方向付けを盛り込むか注目を集めました。