政府は九日の閣議で東京都の水道料金値上げについて話し合ったが、全般的な空気としては値上げはやむを得ないが、他の物価に及ぼす影響等から値上げの時期および値上げ幅について検討の余地があるとの考え方が強かったもようで、この問題については関係各省庁でさらに検討することになった。また同日の衆議院予算委員会でも高田富之氏(社)からこの問題についての政府の基本方針が糾され、佐藤首相、田中蔵相、神田厚相らが答弁に立ったが、佐藤首相は「今度の東京の水道料金値上げは時期としては大変まずいので、内容を精査したうえ対策をたてたい」と答えた。これに対し高田氏は水道事業の独方採算制を廃止するよう社会党としての意見を申し入れた。一方、東京都でも社会党、公明党が真向うから値上げ反対をうち出しており、自民党もこの値上げ案に難色を示し、代案準備の動きを示しているため、この値上げ案の前途は予断を許さないものとなっている。(原文ママ)
この件について、昭和40年2月11日付の日本水道新聞1面の社説「東京都の料金値上げを回避する方策はあるか」では、次のように論じています。
東京都は水道料金六四・三%、下水道料金五一・三%の値上げ案を発表し、都議会の審議を求めようとしたが、突然の提示であったこと、また、値上げの率が相当に高いなどを理由に、理事者は説明を拒否、与党の自民党も野党の社会、公明党も値上げ反対の態度を堅め、糸口さえつかめない状態となった。誠に不手際なスタートといわざるをえない。
国会方面もいち早く、この水道料金値上げ問題を採り上あげて政府当局を追及したが、事前に連絡のなかった政府当局は腹の中の虫を押さえつつ「水道料金は地方自治体の権限であり、政府はこれにとやかくいうことは、自治権浸害になるが、物価問題が騒がれているとき遺憾である」といった見解を表明している。(中略)