連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第21回 案の定 東京都水道料金 国会で質疑

昭和40年02月11日 日本水道新聞_第0605号

2023年4月14日

政府は九日の閣議で東京都の水道料金値上げについて話し合ったが、全般的な空気としては値上げはやむを得ないが、他の物価に及ぼす影響等から値上げの時期および値上げ幅について検討の余地があるとの考え方が強かったもようで、この問題については関係各省庁でさらに検討することになった。また同日の衆議院予算委員会でも高田富之氏(社)からこの問題についての政府の基本方針が糾され、佐藤首相、田中蔵相、神田厚相らが答弁に立ったが、佐藤首相は「今度の東京の水道料金値上げは時期としては大変まずいので、内容を精査したうえ対策をたてたい」と答えた。これに対し高田氏は水道事業の独方採算制を廃止するよう社会党としての意見を申し入れた。一方、東京都でも社会党、公明党が真向うから値上げ反対をうち出しており、自民党もこの値上げ案に難色を示し、代案準備の動きを示しているため、この値上げ案の前途は予断を許さないものとなっている。(原文ママ)

この件について、昭和40年2月11日付の日本水道新聞1面の社説「東京都の料金値上げを回避する方策はあるか」では、次のように論じています。
東京都は水道料金六四・三%、下水道料金五一・三%の値上げ案を発表し、都議会の審議を求めようとしたが、突然の提示であったこと、また、値上げの率が相当に高いなどを理由に、理事者は説明を拒否、与党の自民党も野党の社会、公明党も値上げ反対の態度を堅め、糸口さえつかめない状態となった。誠に不手際なスタートといわざるをえない。
国会方面もいち早く、この水道料金値上げ問題を採り上あげて政府当局を追及したが、事前に連絡のなかった政府当局は腹の中の虫を押さえつつ「水道料金は地方自治体の権限であり、政府はこれにとやかくいうことは、自治権浸害になるが、物価問題が騒がれているとき遺憾である」といった見解を表明している。(中略)

だが、東京都や大阪市の水道、下水道料金の値上げを回避させる方策はあるのだろうか。おそらく、遺憾の意を表明した佐藤首相も、これを追及する国会議員も、提案拒否をやった都議会も、持ち合わせていないのが真実であろう。
代案を持たないで反対とか遺憾であると語っていることは、もう一歩つっ込んで考えれば「本質的には値上げはやむをえないのだけれども、その方法、値上げの率、タイミングがうまくない」と解することができよう。(中略)
ここ数年、断水だ、減水だと苦労を強いられてきた都民は、「ロクに水もださないで、値上げとは何ごとだ」といきまき、政府は昨年の恩誼を傘に政治的な手を打とうとしている。この憤りにも近い波は拡がりつつあるが、憤りや反対論によって、水道の給水事情が好転するとは考えられない。また、早急に現行の制度を打破することも不可能であろう。
だとすると、東京都の態度と方法論に批判の声を大きくしつつも、結果的には容認せざるをえないのが筋のようである。政府が、いかに東京都を論難したところで、抜本的な解決策を持ち合わせていないことは、昨年の空手形の自粛要望措置によって証明ずみであるし、都議会が大上段に審議拒否をしたところで、一般会計で負担する道が開けるとも考えられない。
政府は、自治権まで侵害して政治的な横車を押すとは考えられないが、二、三月に七十ほどの水道事業体が料金値上げを準備している背景からして、その中央組織団体である日本水道協会も水道事業の健全な発展のために、なんらかの行動を起こすなり、発言を行なうべき要に迫られているのではなかろうか。(原文ママ)

結局再三にわたる審議で修正、可決されましたが、同じようなことが10年後の昭和50年7月にも展開されました。

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