連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第15回 水資源局と水資源公団 国家的要請を遂行

昭和36年_05月01日 日本水道新聞_第0356号
昭和37年_05月07日 日本水道新聞_第0409号

2023年01月20日

強兵なき富国を目指し、戦災復興にまい進――種々の長期経済計画などの推進で経済の高度成長が図られるとともに、水道の面的拡大に合わせて、給水量も著しく増大し、水源手当てが焦眉の急となりました。昭和26年度から建設省が河川総合開発事業として多目的ダムの建設を始め、昭和32年には多目的ダム法が公布されました。昭和34年9月に厚生省から「水道用水公団」案が発表されるや、翌年には建設、農林、通産各省からそれぞれの公団案が出され、昭和36年4月25日に開かれた「水資源関係閣僚会議」において、池田首相の裁断で、建設省主導の「水資源開発公団」と決定されました。

昭和36年5月1日付の日本水道新聞1面に掲載された社説「水資源公団一本化を喜ぶ=さらに水行政の根本にメスを=」では、水資源公団の発足について、次のように論じています。
一昨年、厚生省によって水道用水公団設立ののろしが上げられてから、昨年に至って通産省の工業用水公団案、農林省の水利開発管理公団案、建設省の水資源開発公団案と相次いで水問題を巡る公団案が提起されて来たが、われらは一昨年厚生省案の問題提起以来、一貫して一本化した強力な公団の必要性を主張して来たのである。
自民党の水資源対策委員会や党首脳部でも、一本化を目指し、各省間の調整に努力したが功を奏せず、先に総裁指示の形で、開発と利水の二公団案とするほかなしとの結論を出し、 具体案の作成と今期国会提出の責は一切内閣において処理すべしとして、党としては一応のケリをつけた。
しかし、この結論は、実質的には調整に失敗し、内閣にゲタをあずけて面子を保った形であり、利水三省などは、今期国会提出は事実上難と踏んでいたようである。(中略)

しかし、水問題の解決は池田内閣の一枚看板である所得倍増計画達成の重要な基盤をなすものであり、これを流産に終わらせては計画の一角がくずれ去ること必至で内閣の命運にもかかわり、かつ世論のはげしい批判も起こって来たため、事務当局からタナあげして、 関係閣僚と党首脳部の協議となったが、これまた物にならず、遂に首相裁断によって、最終的なケリがつけられたものである。(中略)
首相裁断の内容を見るに、①公団の事務窓口を経済企画庁とし、また、公団の人事、財務を首相が掌握することとして利水三省側の面子を立て、②ダムと水路の建設、水の販売についての監督権を建設省に専管させることによって、実質的に建設省の優位性を認め、③水料金の決定について各省の共管とすることで、利水三省にも関与させる余地を残している、といったものが大体の骨子である。(中略)
水問題の解決は、内閣の一つ二つの運命とか官庁の縄張りとかいっておられるものではなく、国民の生命と国家経済の盛衰にかかわる緊急課題であることに思いをいたし、関係各省が大悟一番、どうすれば、早急な水問題解決に資し得るかに協力されるよう希求せざるを得ない。
なお、この際池田首相に特に要請したいのは「水問題に首を突っ込む者は命とりとなる」といった従来のいきさつから、今度の裁断にしても、随分お座なりの間にあわせ的なものとなっている感をまぬれないが、水行政をすっきりしたものとするために、より抜本的な対策を打ち立てる勇気を奮い起こしてもらいたいということである。でなければ、水争いに終止符を打つことは永遠に望まれないであろう。(原文ママ)

そして、昭和36年11月31日の参議院本会議で「水資源開発促進法案」と「水資源開発公団案」が可決、成立しました。その後、翌37年2月6日の閣議で初代総裁に進藤武左衛門氏を了承。5月1日に経済企画庁の水資源局(崎谷局長)と水資源開発公団(進藤総裁、柴田副総裁)が正式に発足、7月1日にホテル・オータニで大平官房長官ら700人が出席して設立パーティが開催されました。なお、役員人事で、当初厚生省は監事を拒否したため、空席のままでのスタートとなりました。

昭和37年5月7日付の日本水道新聞では、水資源局と水資源開発公団の発足について、次のように報じています。
日本の水資源開発史上、画期的な意義を持つ経企庁の水資源局と水資源開発公団は五月一日発足した。政府は四月三十日の閣議で水資源局長に崎谷武男氏(大蔵省横浜税関長)、水資源開発公団の総裁に内定中の進藤武左ヱ門氏(前日本工業用水協会長)同公団監事に原田正氏(行政管理庁行政監察局長)をそれぞれ起用することを決め五月一日発令した。また、水資源開発公団の副総裁・理事八名も同日付で発令されたが、厚生省は最後まで監事を拒否したため、監事一名のポストがあいたまま発足することになった。なお、公団の部課長は五月中旬におおよそ決まり、七月十五日に現在施工中の利根川水系=矢木沢ダム、下久保ダム、淀川水系=高川ダム長柄可動き工事を建設省から継承し本格的な事業に着手することになる。水資源開発公団事務所は東京都港区芝西久保巴町十八松田ビル四~六階。
進藤総裁談 水資源開発は国家的な要請なので、総力をあげて事業遂行を期したい。幸いに優秀な役員陣と若い有能な職員が揃っているので、この力を最高度に発揮できるようにしたい。各省庁が関係している点を懸念されているが、基本計画は水資源開発審議会の議を経て経企庁が決めるし、各省庁の局長クラスが公団の理事となっているので、むしろ民主的に、また円滑に運営されるものと考えている。とにかく新しい仕事なので世論や各界の協力をえて、決まった事業計画は馬車馬的に遂行し、国家的要請にこたえるのがわれわれの責務である。(原文ママ)

水道新聞 最近の記事

水道新聞 過去の記事

連載 水を伝える
連載 水を伝える
ページの先頭に戻る