連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第14回 所得倍増時代を迎えて 諸事業が活性化

昭和35年_09月05日 日本水道新聞_第0322号

2023年01月06日

日米新安保条約の調印、発効を巡って政府・自民党対野党・デモ隊が激突し、7月に岸信介内閣が退陣、代わって池田首相が登場し、政治の時代から〝経済の時代へ〟大転換がなされ、昭和35年12月には「国民所得増計画」が閣議決定して国策となり、関連する諸施策が強力に推進されるようになりました。
以来、各種の10ヵ年計画などによって具体的に施策の展開、推進がなされ、生産力の増強とともに労働賃金なども増え、いわゆる「所得倍増10ヵ年計画」の時代を国是的に進めることになりました。が、それは〝民族の大移動〟と評された労働人口の都市集中、四大工業地帯だけでなく日本列島の工業化をもたらし、水道事業の本格的な建設・拡張を緊急なものとし、新参事業である工業用水道の全国的な建設を大きく刺戟しました。
工業立国、貿易立国の先導的な役割を担った工業用水 (道) 施策は特にクローズアップされ、国庫補助金がどんどん付き、ちょうどこの頃、要望の事業箇所と要望満額を獲得しました。
水道や簡易水道も需要急増と普及要望熱をバックに積極的な投資活動を全国的に展開し、強力に推進される時代を迎えましたが、こうした動きは、①水道事業等の管理体制拡充を図った地方公営企業法の一部改正②水道の水質基準に関する厚生省令の一部改正③水道における衛生管理等の対策についての行政管理庁の報告=勧告④厚生省の「水道10カ年計画」 や水源開発・確保のための「水道用水公団構想」発表などにみることができます。
また、水道事業体においても、全国水道企業団協議会議会の前身である全国上水道組合の結成、新技術を導入した東京都の長沢浄水場竣工、東村山浄水場一部通水をはじめ、相前後して大阪市などでも大型の浄水場や拡張計画に取り組み、市民の要望やニーズに対応していきました。
日本政府がカンボジア国プノンペン市水道を賠償の代償として進め、日本の建設会社によって施設が完成したのもこの頃でした。
一方、昭和34年度末(昭和35年3月)の全国の水道普及率は48.7%でしたが、同年中に50%を突破し、以後、年率3~5%という極めて高度な普及率アップを実現し続けました。
こうした一連の水道関連施策のキーポイントはなんといっても水量を確保することで、関係省庁はそれぞれ開発や管理の公団案を発表、一方、与党である自民党は〝政治的収支を図るべく〟水資源(開発)特別委員会を設けて活動を開始するなど、所得倍増時代に対処した動きが一斉に活発化しました。

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