連載 水を伝える

日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。

第6回 クラッセン氏の水質汚濁防止勧告 公共下水道の整備を促す

昭和31年_08月9日 日本水道新聞_第0111号
昭和32年_04月18日 日本水道新聞_第0147号

2022年09月09日

関係省庁・機関の中堅クラスをメンバーとする水質汚濁防止連絡協議会の要請で来日したWHO顧問で米国イリノイ州公衆衛生局主席技官のC・Wクラッセン氏は昭和31年8月4日、虎ノ門の共済会館で開かれた水質汚濁防止協議会(関係者約40人出席)で「水質汚濁防止のアイディア—イリノイ州の水質汚濁防止の実際と今後のあり方」と題した講演を行い、多くの聴講者に感銘を与えました。
クラッセン氏は、「水質汚濁防止は、産業の発展に伴い、差し迫った問題であり、水という尊い資源を総合的な立場から、一方的でなく合理的に考え、バランスの取れた利用をもたらすよう、広く協力されることが肝要である。ザックバランにいって、成績が上がらない州は衛生部だけでやろうとしているところであり、衛生工学技師が水質汚濁について何でも知っていると思うのは、自分で墓穴を掘るようなものだ」と世界的な知見を披露しました。

その後、同氏は日本の水質汚濁現場や上下水道事情など視察し、同月31日には関係省・機関の関係者と「水質汚濁防止と水資源の合理的利用について」懇談し、これら一連の調査結果と所見をまとめた「日本国のための水質汚濁防止計画に関する報告書」をWHOに報告しました。それが翌32年4月、日本政府に勧告の形でもたらされましたが、クラッセン氏の積極的な言動と報告=勧告は、わが国の水質汚濁防止の開明を迫り、セクショナリズムを批判し、具体的な方策を提言するなど、先駆的役割を大きく果たしました。
その要点は、次のように抜粋されています。
「日本の水質汚濁防止問題は重大な段階にきている、現行の法規や制度は問題解決に不適当である。早急に防止対策を講じなければ、価値ある水資源の多くを破壊する危険がある。中央政府の2元行政は非効果的なものにしている。まず河川の実態を把握すること、国家的見地に立った水質汚濁防止法が中央政府により制定される必要がある。中央政府に水質汚濁防止庁を設けるべきである」

これを受けた形で日本政府筋の水質汚濁防止の法制化が進み、「公共用水域の水質保全に関する法律」の制定や防止・解決策としての公共下水道の整備・促進が進行することとなりました。
日本水道新聞はこうした一連のニュースを追って記事にし、 クラッセン氏の報告書の要旨を連載して、水質汚濁防止問題の啓発、法制面の進行に努めました。

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