日本の水道事業は普及促進に重点が置かれてきましたが、90%を超え、量から質の転換が求められるようになりました。そこで、昭和57年10月5日に厚生大臣が生活審議会に今後の水道事業のあり方を審議願うべく、「高普及時代の水道行政方策」について諮問。 1年半余の審議を経て、59年3月26日に答申、平成13年の「基本問題検討会答申」までの15年間、わが国の水道行政の規範となった、まさに画期的なものということができます。ここでは、諮問から答申までの経緯を見てみましょう。
水道普及率が90%を超えた。未普及人口の解消と並んで、「水道の質の向上」の必要性が各方面から指摘されている。こうしたことから審議会では水道部会の下に新たに二つの専門委員会を設け、①水道の施設整備②水質③経営の維持管理――について具体的方策を検討する。審議期間を1年半程度と見込み、水道行政が従来の〝量確保〟〝面的整備〟からサービス面も含めた〝水道の質向上〟への取組みに積極的姿勢を示すことは百年近いわが国近代水道の歴史に一大エポックを画するものと考えられるところであり、審議会の答申内容が注目される。
昭和57年10月5日開かれた生活環境審議会 (鈴木武夫会長))に森下厚生大臣は「高普及時代を迎えた水道行政の今後の方策について」を諮問した。
わが国の近代水道は明治以来1世紀を経て国民生活及び経済活動の基盤施設としての地位を確立しているものの、昨今では水道水源、水質問題の多様化・複雑化、さらには水道施設の老朽化、財政事情の悪化など自然的・社会経済的環境の厳しさも加わり、〝安全で快適に使用し得る水道水の安定供給確保〟〝負担の公平化〟などの社会的要請に応える上で大きな課題となっている。
このため「水道の高普及時代を迎えて、社会的要請に応え得る水道の整備、充実を図るため、水道を取り巻く環境の今後の動向を踏まえ、新たな施策を展開していくことが必要だ」として審議会への諮問となった。
審議は、①水道整備のあり方②施設整備の基本的方策③水質管理④水道経営⑤水道の維持管理――を中心に行われる見込み。