昭和50年後半、水道水における異臭味の発生、あるいは国民の嗜好の高度化に伴い、「おいしい水」を求める声が多く聞かれるようになった。これに応えようと、厚生省は水道の専門家や識者11人で構成する「おいしい水研究会(座長=鈴木武夫・国立公衆衛生院長)」を昭和59年6月11日に発足させ、利き水会1回、作業部会2回、研究会3回を開いて、①水質と水の味②全国のおいしい水道水の選定・評価③おいしい水の水質要件④水のおいしい飲み方――について検討を行い、その結果を昭和60年4月24日に提言した。
これによると、水の味をおいしくする要素として、蒸発残留物、硬度、遊離炭酸、また水の味を損なう要素として、過マンガン酸カリウム消費量、臭気度を指摘。残留塩素、水温も含めて要件を設定している。これらの審議を通じて、「わが国の水道水はほとんどがおいしい水の範囲に含まれている」としつつ、「水源の汚濁防止」の必要性を強調。つまり、「おいしい水」は水源が汚染されていない水ということで、水源汚濁防止が第一義だとし、おいしい水の水質要件として次の7項目を例示した。
①蒸発残留物30~200mg/ℓ②硬度10~100 mg/ℓ③遊離炭酸3~30mg/ℓ④過マンガン酸カリウム消費量3 mg/ℓ以下(水質汚濁に伴って水道水中に含まれる有機物質量を表わす指標)⑤臭気度3以下(通常の人が異臭味を感じない水準)⑥残留塩素0.4 mg/ℓ (通常の人が塩素臭を気にならない濃度)⑦水温最高20℃以下。
日本水道新聞社は2024年で創業70周年を迎えました。本連載では、約70年間にわたる当社の報道について、日本水道新聞、日本下水道新聞の過去の紙面を通じて、印象的な出来事を回顧していきます。70周年という節目を迎えるに当たり、創刊号からこれまでの紙面を振り返ることで、読者の皆さまに当社の報道を通じた上下水道史を伝えるとともに、われわれも歴史の教訓から学び、次の10年に向けて、新たな一歩を踏み出すきっかけとしたいと考えています。
第43回 おいしい水の要件を提言 7項目を示す
昭和60年_04月25日 日本水道新聞_第2565号
2024年3月29日
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